米国および中西部の雇用状況

"激動の時代に向けての日系企業人事戦略"
キマタパーソネル&コンサルタンツ
社長 木全健一

1. 米国雇用状況概要

2006年は、2005年度に引き続き米国経済の景気拡大、好景気が継続したために、米国企業全体及び在米日系企業の雇用活動が活発な一年であった。在米日系企業では、自動車と工作機械メーカーを中心に著しい景気回復が見られた。米系企業では、企業向けサービスや、教育、健康サービスなど、サービス産業が活発に雇用を創出した。一方では、GMなどの大手自動車メーカーや、建設業では雇用が減っている。 平均時給は2001年の14.3ドルから、2006年には16.79ドルに上昇した。全米の失業率は、米経済の先行きに対する安心感から、2003年のピーク6.3%より順調に下がりづづけ、4.4%と低い水準を維持している

2 . 日本国内の雇用市場

目を日本国内に向けると、日本国内の失業率は、2002年5月のピーク5.5%から、昨年11月には4%にまで改善している。 来春の大卒採用は15.8%増加する見込みである。 また大卒就職希望者の内定率は、2002年にはわずか73%であったが、この春には87%にも達しており、企業の採用意欲は、一気に高まっている。 また、企業は少子高齢化人材不足化の時代の人材確保に向け、パートの雇用も2005年に最高水準に達した後、2006年には5年ぶりの低水準に達しており、紹介派遣などの制度を利用しつつ、企業は正社員の雇用へシフトしている。

好調を続ける日本経済のけん引役は自動車産業や、工作機械などの20世紀型製造業であり、製造業では技術の伝承が大きな問題になっており IT産業やエレクトロニクス産業は競争力が低下する傾向が見られる。Made in Japanの品質に対する神話にも翳りが見え始めている。今後は優秀な外国人の登用が大きな課題となるであろう。

3 . 米国内での日系企業雇用状況

2007年度、在米日系法人企業の42.9%が雇用の増大を計画しており、変わらないと答えた41.1%、減ると答えた7.6%を大きく上回った。 在米日系企業の雇用増大に伴い、人手不足が深刻化している。また新卒学生に対して、2004年以降の、H1-Bビザの年間枠が195,000から65,000に1/3に減ってしまった影響が大きく米国での就職自体が狭き門になっている。 移民局は殺到する応募に対し、今年も4月はじめにアプリケーションの受領を打ち切った。

OPTを取得した学生でも、インターンなどである程度の職歴を積んでおかないと即戦力にならなず、また、離職率の高さなどからも、H1-Bヴィザのサポートに二の足を踏んでしまう企業が増えている。 新卒学生側としても米国に残る道は険しいものになっている。

日本での雇用状況改善を反映し、米国大学卒の学生が日本へ帰国するケースが増えている。 特に失われた15年間の就職氷河期に米国での就職を希望していた女子学生の帰国が目立っている。 また、女子学生のキャリア志向が顕著になっており、スキルアップの転職を目指して日々研鑽を積むことが日常となった。

4 .給与


米国法人日系企業の給与上昇率は、2006年に3.56%と2005年の3.73%よりも下降している。2007年も3.56%と物価上昇率の上げ幅に対応しているに留まっている。

日本国内本社の初任給は人材確保に向けて一斉に上昇し、大手電気メーカーは1500円上昇している。 しかし、基本給の賃上げに関しては、中国やインドなど熾烈を極めている国際間競争に勝ち残るためには賃金の抑制が必須であると考える企業が多い。賃金報酬は賞与で応えると答えた企業が2割に上っている。 今までの横並び、一律の賃上げは過去のものになりつつある。しかしながら、抜きん出た人材に対して、抜きん出た賃金を出すことには抵抗があり、給与の高い外資系に転職するプロの人材も増えつつある。

5 . 医療保険

人件費の多くの割合を占める医療保険も経営の大きな課題となっている。在米日系企業の98.2%は医療保険、94.6%は歯科保険、67.9%は眼科保険に加入している。 保険加入資格の時期を見ると、採用日直ぐが27.6%、3ヶ月後が28.5%、3-6ヶ月が39.8%、6ヶ月が3.6%となっている。 優秀な人材を確保するには保険加入の時期も早める必要がある。特に加入時期が6ヶ月の企業は人材確保の足かせになり早急な対応が必要である。会社側負担率では、100%が会社負担する企業の割合は48.8%、99-70%では46.2%である。家族負担率も100%会社負担では26.7%、99-70%会社負担では46.2%となっている。 特に優秀な米人は日系企業の厚いベネフィットに魅力を感じており、会社負担率を下げることは人材の流出を即座に意味することを覚悟すべきである。

6 .人材確保対策

2006年に日本国内で転職した人材は、2005年より6万人増え、過去最高の346万人になっている。 中でも女性の転職が2.9%増えた。 興味深いことに、前の仕事より収入が減った人材が37.3%と、収入が増えた33.3%を上回っていることである。 下に示す表からも分かるように、在米日系法人企業は、アドミ及びアシスタント等の一般事務の給与を低く抑え、高いスキルを持つ会計マネージャーやセールス等プロフェッショナルの給与を上昇させている。

弊社調査では、特に優秀な人材の顧客開拓能力によって大きく売り上げに差が開いてしまうセールスのポジションで給与が低く、現地米系企業より10-15%低い水準にあり、OEMのような高度なスキルを持つセールスの人材には非常に高い給与を覚悟する必要がある。また、優秀な人事マネージャーの給与は非常に高い水準を維持している点も注目すべきである。

表1. 日経リサーチによる主なポジションの平均給与一覧

ポジション
2005
2006
上昇率
アドミアシスタント
$37,000
$36,550
-1.2%
重役秘書
$48,000
$46,815
-2.5%
会計アシスタント
$36,725
$36,790
+0.1%
会計アシスタントマネージャー
$36,725
$36,790
+1.7%
会計マネージャー
$65,150
$71,500
+9.7%
カスタマーサービス
$38,275
$38,000
-0.6%
セールスレップ
$50,000
$56,950
+14%
輸出入担当者
$31,000
$31,081
+0.3%
HRマネージャー
$73,000
$80,900
+10.8%
メカニカルエンジニア
$60,000
$61,700
+2.8%
エレクトリカルエンジニア
$65,454
$65,676
+0.3%


7. 今後の対策


統計からも分かるように若手社員の転職意欲は高まっており、それを受ける企業も中途採用を増やしている。優秀な若手が集まる企業には、魅力的な人事戦略が不可欠である。特に在米日系企業は、急進するアジア諸国との給与面で競争し、しかも、現地企業との相場も考慮した給与体系を確立せねばならず、新しい時代の人事戦略が必要となる。

弊社ではNYの人事管理コンサルタント、イマコンサルタントと提携し、日々一刻激動の人材市場で総合的に人事サポートをお手伝いをしています。 また保険のエージェントも承っておりますので、お気楽にご相談下さい。(WEB)

出典:日経リサーチ:
在米日系企業における現地スタッフの給与と待遇に関する調査

 
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